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3.11以降の表現とは


今日は、富山県黒部市に行きます。文芸道場・北信越[福井・石川・富山・長野・新潟]ブロック大会で高校生に「詩のボクシング」の指導をするためです。

どんな声と言葉に出会えるのでしょうか、楽しみです。

最近いろいろ取材を受ける中で、3月11日以降の表現について考え、話すようになりました。まだうまくまとまっていませんが、少なくとも「詩のボクシング」の場は3月11日以降も色あせない、いやむしろその存在に輝きを増す場になるだろうということは見えています。もちろん、だから人気が出るとかではなく、逆に場としては表面的には地味になって行くように思います。

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3月11日の大震災によって、死をより強く感じることで、これまでの生活観、人生観、死生観までもがひっくり返された。

その背景には、既存のシステム(権力)を疑うことなく、それを発展させて行けるという幻想が幻想でしかなかったこと、その象徴として、いまだ収束の気配すら見えない福島原発事故、その背景にある行き詰まった資本主義の姿が世界を覆っている経済不況によって暴かれてしまったことが挙げられるだろう。

これまでわたしたちが疑ってもみなかったこと、その化けの皮ともいえる価値観が覆されたことによってわれわれが表現することににおいても変化がなくてはならないが、これまでのシステムの中に組み込まれている人は、結局のところ新たな表現を見出すことなく、より影響の少ないあるは影響の及ばないところに身を寄せながら何も考えないようにするか、自虐的にもがくしかないように感じている。

では、どうすればよいのか。まずは、そのシステムからはみ出ること、それができなければ何も始まらないだろう。実際にはみ出そう動き始めた人たちもいるが、しかしながらその動きが既存のイデオロギーに奪取されてしまうとはみ出たり戻ったりの優柔不断な悪循環に陥ることになるのではないか。

ところでわたしは、よく言われている、一人一人の活動は弱いもので力を合わせなくてはならないという考えに与しない。むしろ逆で、一人一人が弱くあってもまず既成のシステムの束縛、制限されることからはみ出す、そこで孤立しながらも孤独に耐え得る自立できる考えと場所を持つことが大切だと考える。

そのためには、これまでの考えに「一本違う」考えの軸を導入する必要のがある、つまり発想の転換が新たな生き方を見出すことが重要である。

簡単に言えば、x軸とy軸では平面しか表せないが、z軸を導入することで空間を表せるようになるということ。

ちなみに「詩のボクシング」における一本違う軸というのは、声という軸であり、その軸は時間を必要とするからx軸とy軸による平面、つまり文字を媒体とする平面としての紙面に収まるものではない。

また、1999年からプロという既存のシステムからはみ出る、あるいは組み込まれないことで参加者個々の内発性によって音声表現の新たな表現の地平を切り開いてきた「詩のボクシング」トーナメントは、3月11日以降の表現として一つのひな形になるものを生み出して行くことになるだろう。

と同時に「詩のボクシング」は、これからも無名性の声が集まり、その声に他者が耳を傾ける場として継続され、その場を介して参加者は無名性を有名性に転換する中で、これまでとは異なる前述の自立できる考えと場所の中で新たな生活観、人生観、死生観を見出して行くことにもなるだろう。

地道だが、このことが今求められていると思う。

「無名性」とは、他者に理解されていない、あるいは受け入れられていない状態のこと。「有名性」とは、他者に理解されている、あるいは受け入れられる状態のことで、いわゆる「名を成す」や「有名になる」という意味ではない。

被災地でのこの写真は、3.11以降のことについて多くのことを語ってくれています c0191992_8524443.jpg
撮影:Katsunori Kusunoki 撮影場所:宮城県気仙沼市


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by videoartist | 2011-09-10 09:00 | 「詩のボクシング」