コロナ以後、言葉だけではなく、言葉以前の身体と声でコミュニケーションする場とした「詩のボクシング」の在り方も変わる
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2008年不況下の「詩のボクシング」と新型コロナウイルス不況との関係
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新型コロナウイルス(covid-19)によって引き起こされたパンデミックによって、世界同時的にこれまでの日常生活を大きく制限され、日本では緊急事態制限が解除されたといえ、(人類が初めて経験するパンデミックということもあり)各国それぞれに政治経済の対処療法的(言い換えれば場当たり的)な対策をする流れの中で、わたしたちはこの先の生活に新たな生活様式(ニューノーマル)という抽象的な言葉を具体化する生活を見つけ出して行くことが強いられるといっても過言ではないでしょう。
経済状況に対してよく例に出されるのが、2008年のリーマン・ショック(2008年9月、アメリカの有力投資銀行であるリーマンブラザーズが破綻し、それを契機として広がった世界的な株価下落、金融不安[危機]、同時不況の総称)です。もちろん、今回の新型コロナウイルスによって引き起こされたパンデミックによる不況とリーマン・ショック不況とでは、その原因、内容、規模において大きく異なります。ただし、貧富の格差という点においては、共通した問題があることが見えてきます。
2008年といえば、「詩のボクシング」は10周年を記念した大会が行われた翌年になります。つまり、2008年以降の「詩のボクシング」の大会は、リーマン・ショック後の不況下で行われていたことになります。翌年の2009年には、新型インフルエンザ(コロナではありません)の発生が宣言されています。この時もマスクが不足しているとか、医療機器が足りないとか報道されています。そして翌2010年の国内の出来事としては、「尖閣沖で中国漁船衝突」、「大阪地検で証拠改ざん。検事、元特捜部長ら逮捕」、「小惑星探査機[はやぶさ]が7年ぶりに帰還」、「記録的な猛暑、熱中症による死者多数」などが挙げられます。そして、2011年には、東日本大震災があり、日本経済は再び大打撃を受けます。
2020年以降に起こることをどこか暗示しているような気がします。2020年は、パンデミックと大不況が同時にやってきているので、大地震による災害と地球温暖化による台風などの被害が重なって起きるかもしれません。
新型コロナウイルスは、人々を分け隔てなく平等に襲いますが、その襲い掛かるウイルスを払いのける手段は平等ではなく、そこに経済的格差が歴然として存在します。これから冬を迎える南半球、中でもアフリカや中南米では手を洗う水すらない地域もあります、治療のための医療器具不足については言わずもがなです。
わたしは、コロナ以後、言葉だけではなく、言葉以前の身体と声でコミュニケーションする場とした「詩のボクシング」の在り方も変わるざるを得ないと感じています。
インターネットを利用できるようになった1995年にhtml言語を使ってホームページを作り、詩の実験をいろいとやっていました。その時、糸井重里さんとスクロール機能を使った共同詩を創ったこともありました。
それが縁で、『ほぼ日刊イトイ新聞』に「詩のかくれ場所」として投稿コーナーを作ってもらいました。
「詩のかくれ場所」というのは、糸井さんの銘銘ですが、詩そのもの表現に行き詰まりを感じていたわたしは、詩のかくれている場所に詩を感じる感受性が宿っていると思い、すぐに連載投稿を引き受けました。その後、「詩のボクシング」で忙しくなり連載投稿を終えましたが、今、新型コロナウイルスの禍中で、改めて詩を新しく作るというよりも、詩が生れる場、つまり、詩を感じる土壌が豊かであるのかどうかを再確認する必要があると思っています。
豊かな土壌があれば、さまざま植物が芽を出し、成長しますが、そうではなく荒れた土壌であれば植物は、芽を出し咲く花はありません。詩を花に喩えるとすれば、今は荒れた土壌でむりやり花を咲かさせようとしているかのようです。だから、口ずさむ詩が生れないのではないか。
つまり、詩情(ポエジー)を感じられる感受性に栄養を与えることができれば、そこに詩は芽を出し、育つと言い換えることもできると思います。
だから、「詩のかくれ場所」をみなさんと共に探し、その場を耕すことができればと考えています。いかがですか、いっしょにやりませんか。
ところで、谷川俊太郎展が、熊本市現代美術館で2020年6月27日から9月6日まで開催されるということで、美術館からわたしと谷川さんの共同制作作品『ビデオサンプラー』の著作権使用の承認依頼書が届きました。クレジットには、出演:谷川俊太郎、楠かつのり、音楽:谷川俊太郎、制作・いまじん/1986とあります。いまじんは、わたしが発行・編集責任者として世界初のビデオ映像による雑誌の名前です。このいまじんで、谷川さんと遊び心で当時は珍しいビデオ映像で楽しく遊んでいました。
遊び心が、ビデオ映像での表現の場を豊かなものにしてくれていたと思います。